呼吸器の病気では、せき、たん、呼吸困難(息切れ)、喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー)、胸の痛みなどの症状がよくみられます。これらの症状は、いろいろな病気で共通してあります。

例えば、せきは、かぜ症候群、気管支喘息、肺炎、COPD、肺癌などほとんどの呼吸器の病気でみられます。診断には、症状の他に、レントゲン、呼吸機能検査、たんや血液検査などが必要になります。

呼吸器の症状が少し長く続くときは、私ども呼吸器専門医にご相談下さい。

主な呼吸器の病気を少し具体的に説明しましょう。参考にしてください。

アレルギーが基礎になっておきるものです。
喘息の発作は、気管支でアレルギーの炎症がおきて、気管支の筋肉をれん縮させ、気管支の粘膜がむくみ、たんの量が増えます。その結果、気管支は狭くなり、空気が通りにくくなり呼吸が苦しくなります。その強い状態が喘息発作です。喘息発作では、就寝時や夜中から朝方にかけて、せき、喘鳴、呼吸困難が現れます。喘息は、子供から成人、70才過ぎてからも初めて出てくることがあります。

喘息の治療は、世界的に治療ガイドラインが作られ、それに沿って行います。原因となるアレルギー抗原を遠ざけ、アレルギー炎症を抑える吸入ステロイド薬を中心にした治療が行われています。治療の目標は、発作が無いようにするだけでなく、ずっとよくして肺機能を正常とし、普通の生活が送れるようにすることです。

中高年の男性に多い病気です。タバコが主な原因です。タバコによって、肺の組織が破壊される肺気腫というものと、気管支に炎症を起こし、たんが多くなる慢性気管支炎とを併せてCOPDといいます。

せき、呼吸困難、たんなどが主な症状です。レントゲン検査や肺機能検査が必要です。

治療の第一は禁煙です。禁煙には禁煙補助薬を使うことも1つです。呼吸困難に対し吸入薬や内服薬を使います。血液中の酸素が低くなってくると、酸素吸入を自宅で行うこともできます。(在宅酸素療法といいます。)家に閉じこもりきりにならないで、外出・散歩など行い、無理のない範囲で体に刺激を与えることも大切です(リハビリテーション)。

肺の中で細菌が増殖することで発症します。原因菌としては、肺炎球菌やインフルエンザ菌、マイコプラズマによるものが多くなっています。

症状や発熱や咳、たんなど、風邪と似ていることもありますが、高熱が続くことも多いです。診断には丁寧な聴診やレントゲン検査が必要です。

治療には原因菌に合わせて適切な抗生物質を選択することが重要です。
子どもから高齢者まで発症しますが、近年高齢化の進行に伴い日本人の死亡原因の上位になってきています。

肺組織に線維化(線維成分が多くなる)がすすみ、肺が硬くなり,伸びにくくなり,酸素の取り入れが障害される病気です。一番の症状は、呼吸困難とせきです。肺の組織を取って調べ、治療薬に反応するタイプかを確認してから治療を始めます。

過敏性肺炎:かびや鳥の蛋白などを吸入すると、肺組織に反応が起こります。肺線維症に似た症状やレントゲン写真を呈しますが、原因を取り除くと、病気は良くなります。関東地方より南の地域に主に夏にでてくる夏型過敏性肺炎が最も多いものです。住まいのかびを吸入して起こります。鳥飼病、エアーコンディショナー病、農夫症などがあります。

現在、癌の中で一番死亡者数の高いものです。タバコが大きな原因です。症状がなかなか現れにくいので、診断がおくれて根治的な治療ができにくいことが問題です。胸部の検診は毎年受けておくべきでしょう。治療は、外科手術、がん化学療法、放射線療法が中心です。

近年、遺伝子変異を調べ、それに基づいた治療法が進展し、予後が少しづつ良くなっています。

タバコは肺癌の最大の危険因子です。禁煙して数年たてば肺癌のリスクが少しづつ低下してきます。周りの人もタバコの影響を受けます(受動喫煙)。